本当は誰にも教えたくないもの / Northampton編

気温もぐんぐんと上がり出し「そろそろ夏かぁ」と思い始めると、海外での展示会の日程がバシバシ決まっていきます。
つい最近海外から戻ってきたつもりだったのに、慌てて次回の仕入れに向けて気持ちのシフトチェンジをしなければなりません。
でもその前に、前回の海外出張のレポートがまだまだ残っているのでその話をさせて下さい。

 

“靴の聖地”と耳にする事の多いEnglandのNorthampton。
実は何度か行った事はあったのだが、今回は少し離れたRushdenのファクトリーへ向かうことにした。
そのファクトリーでは英国靴としては少し珍しい製法で現在でも靴を作っており、使用できるレザーは個性的な種類のものからも選べる。
個人的には洗練された仕上げには少し不向きなように思うが、無骨で力強い仕上げの時にはとても素晴らしく仕上がると思っていて、英国靴で今まで以上の力強い靴を求めてそのファクトリーへ赴いてみたのだった。

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Northamptonには何度か行ったけれど、Rushdenまで来たのは初めて

 

とても気さくに迎えてくれ、軽くミーティングを終え早速ファクトリー内部へ。
僕がイメージしていたよりずっとコンパクトなファクトリーで、全ての工程の透明性が表れていた。
少数で作業を行っている現場は他人に責任転嫁もしにくいので、質の良いモノが出来上がると思っている。…そう思いたい!

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コンパクトなファクトリーだったけれど、説明がかなり熱心で、結局二時間以上に渡って説明をくらう羽目に…おかげで足が棒になってしまった。

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レザーのストックや、膨大な量の木型や型紙。普段見ることが無いものばかりでファクトリーの見学というのには心が踊る

疲れて一息入れようと休憩していた時、部屋の片隅に埃を被った昔のサンプルを発見した。
まさに理想に近いデザインだったので、このモデルは作れるのかと尋ねると、少し難しい顔をしながら「昔、様々なブランドを渡り歩いた有名な靴の企画人がいたけれど、今は亡くなってしまったから……よし、作っちゃおう!」と中々ノリのわかるおじさん達だ。

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おじさん達は気さくでノリがとても良い、ありがとうございました

 

しかし話を進めていくうちに、様々な問題が浮き彫りになった。

「WWⅡの時の木型がベースの木型は持ち込みだった為に、今はファクトリーに木型が無い」
「使用しているレザーが現在は価格が跳ね上がってしまっている」
「手元に残っていない部材がある」

などなど、他にも次々と問題点が出てきた。

しかし、元々先人の完全コピーは気がひける事もあり、仕様変更を繰り返しながらファクトリー側の協力もあってなんとか形になりそうになってきた。

それにしても木型を一緒に選ぶ作業にはかなり悩んだ。
僕が悩み過ぎてしまって、しびれを切らしているおじさんは「こんな感じでしょ?」みたいな感じで適当な事を言ってプレッシャーをかけてくる。
もちろん聞き流す 笑

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ここにあるのはほんの一部、少しの違いで靴の面構えが変わってしまうので本当にとても悩んだ

 

レザーも一色だけなら用意できそうとの報告を受け、イメージにかなり近づけることが出来た。
あとはサンプルが上がるのを数ヶ月ワクワクしながら待つだけだ。

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とても素敵なレザーなのでお楽しみに

 

夢中になってオーダーをしていたせいで、ファクトリーを後にする頃には訪ねてから4時間近く経っていた。
次のファクトリーへの約束の時間には間に合いそうに無いなと諦めていると、なんと送ってくれるとおっしゃるでは無いか!!
「Thank you! Thank you!!…」とあんなにありがとうと連呼したのは海外でももちろん日本でも初めてかもしれない。
次の目的地へ向かう車中、長時間に及ぶファクトリー見学で棒のようになった足をほぐしながらしながら、ぼんやりとNorthamptonの街並みを眺めていた……
この後再びGoodyear welt processの工程を再び一から説明されるなんてその時は思いもしなかった。