本当は誰にも教えたくないもの 後編

後編はまだかという声をたくさん頂きましたので、早速本題、OLD TOWNのアトリエでのことを中心にお話させて下さい。

それまでのことを考えれば順調に、2時間遅れ程で到着したHoltの街。

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Londonのエネルギッシュな喧騒とはエラい違いで、
落ち着き払っているHoltの街。こんな所に店を構えるなんて、
OLD TOWNはなんて渋いのかと思った。

 

さて、いよいよOLD TOWNのアトリエへ向かおうと、iPhoneを取り出して、画面を覗き込んだ瞬間、衝撃の事実が発覚した…
iPhoneのCoogle mapが繋がらないのだ。
これまで幾度と無く襲い来るストライキやトラブルから救ってくれた、唯一頼れる旅の相棒の電波が繋がらないなんて、あんな絶望的な気分は思い返してもほとんど経験が無い。(大袈裟過ぎ 笑)
Pocket WiFiはHoltではほとんど電波が入らず、鞄の中で悲しく眠っていた。

いくら小さな街だからといって、闇雲に歩き回っても当然見当たらず、確実にHoltの街には着いていて、きっとOLD TOWNも目と鼻の先にあるはずなのに、いっこうに見つからないもどかしさで一杯になった。

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落ち着き払ったHoltの街ではどこかのお店に入って道を聞こうにも中々店も見当たらない。
さて、困ったぞ。

 

それでもしばらく探して歩き回っていると、Lady’sのセレクトショップらしきお店を発見した。すぐさま入店して道を尋ねる事に…

「OLD TOWNを探しているのですが、ご存知ですか?」

「もちろん知っているよ!すぐ近くにあるから案内してあげよう。」

どうやらOLD TOWNはHoltではかなり有名らしい。いよいよ辿り着けることが現実味を帯びて来て、ワクワクしていた。
丁寧に案内して貰った先に、とうとうOLD TOWNを発見、安堵したと同時に急にドキドキしてきていた。

題名にもある通り、OLD TOWNは僕自身あまり人に教えたく無い程、本当に好きで好きで仕方の無い、素晴らしい洋服だ。
何年も前から買い集めている間にも、アトリエへ向かう道すがらにも、想像の中で良いイメージは膨み続けた。
果たして僕からの一方的で極めて強い愛情は、果たして彼らに伝わるのかどうか、それは緊張するに決まっている。
(あと正直な話、それだけ好きなブランドなだけに、出会ってもしすごく嫌な感じだったらあまりにもショックが大き過ぎるし怖かったのもある。)

意を決し、ドアをノック。

ドアが開き、迎え入れられ目に留まったのは、すでに何名か先客がいて試着をしている風景。

聞けば皆Londonから時間をかけて来ているらしい。
こんな辺境地……失礼しました。
こんなのどかな場所なのに、素晴らしいと思った。
(もっともみんな当然車を飛ばして来ていて、電車で来ているのは僕位だったらしい…)

少しバタバタしていたが、OLD TOWNのMarieさんと軽く挨拶を交わした。
Marieさんとは初対面だったけれど、Marieさんとは何度かメールでのやり取りをさせて頂いた上でOLD TOWNのアトリエにお邪魔していたので、僕は不思議と初対面な感じがしなかった。

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バタバタしながらも手際良くオーダーを受けていくMarieさん。

 

客足も一段落して落ち着いた頃合いで、ちょっとした雑談を交わしていると、Marieさんが突然「Will!」「Will!!」と階段の下から名前を呼んだ。
すると階段の上から「Yes sir!!」と勢いの良い返事が返って来た。
一言二言交わしていたが、どうやら2Fに上がって来いということらしい。

いよいよ憧れのデザイナーとの対面。
緊張は最高潮だった。

初見の印象は最高で、“なんてOLD TOWNが似合う人なんだろう。”と、Willさん自身が縫い上げているのだから当たり前なのかもしれないけれど、OLD TOWNの洋服の完璧な姿を見た気がして、感動してしまった。

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この方がOLD TOWNのデザイナーWilliam Brown氏。
“いつかWillさんのような着こなしが出来るようになりたい”純粋にそう思った。

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OLD TOWNの2Fはアトリエ。
OLD TOWNの洋服は全てここで生まれている。

 

軽く挨拶を交わして雑談をするが、自分の気持ちを伝えようにも緊張し過ぎて上手く表現出来ない……
あんなに歯がゆく感じたのも久々だった。

とても物静かなWillさんは、僕の瞳を笑いもせずに「じぃ〜っ」と見つめて話を聞いていた。何故だかお互いに汗が止まらない……
汗をだらだらと流しながら、ようやく伝える事が出来たのは、やはり洋服の話だった。
確かOLD TOWNは縫製が特徴的で素晴らしい。そんな様な事を伝えたと思う。

Willさんは一瞬だけ言葉で伝えようとしてくれたけれど、なんとすぐに僕の目の前で縫い始めてくれた。
慣れた手付きで生地をカッティングし、年季の入った一本針ミシンで縫い上げる姿に無駄な動きは一切無く、美しく流れるような動きだった。

 

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動画では無いのが残念だけれど、洗練された動きに見とれてしまった。

その後身振り手振りでなんとかコミュニケーションを交わしていると、増々OLD TOWNへの愛情は深まっていった。
なんでも40年程前にLondonでスタートして以来Willさんは独学でモノ作りを続けてきたそうで、Londonに居たのも最初の数年だけで、すぐに都会の喧騒からは離れてHoltに移って来たらしい。
40年以上という長い間、モノを作り始めた当初と全く変わらないスタイルで続けてきたWillさんに縫製のことを褒めても、ちょっとだけ照れながら「これしか出来ないからね。」の一言だけ。
半世紀近く同じスタイルを貫いた人間の「これしか出来ないからね。」の言葉の重みは半端じゃないと、胸がじんじんとした。

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OLD TOWNのアトリエの1Fはお店になっていて、拘りの詰まった素敵なディスプレーに心が洗われる。

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Willさんから滲み出るオーラというか佇まいは本当に格好が良い。
Holt暮らしが長過ぎて、Londonのファッション事情は今では殆ど分からないらしい。
そういう所も渋くて良い。

 

後からMarieさんも会話に加わってOLD TOWNのスタイルを聞かせて頂いた。

なんでもOLD TOWNのショップでは現物の販売は一切しておらず、オーダーを受けてからWillさんが作り始めるという、なんともクラシックなスタイルを貫いている。
OLD TOWNに伺った日、先に来ていた数名のお客さん達もサンプルを合わせてオーダーして帰ったそう。

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オーダーチャートの絵柄もチャーミングでなんともセンスが良い。

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生地スワッチにすら感動 笑

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そういえば、Marieさんが自分は本当はそろそろ引退してのんびりしたいと言っていた。
それは困るなと思ったが、Willさんが縫うから仕方無いとのこと。Marieさんには悪いけれど一安心。

 

時間と共に自然と打ち解けて来て、いよいよ今回のLOFTMANでのオーダー会の話を伝えてみると、お店に仕入れて沢山オーダーが付き過ぎても困るから、是非オーダー制にして欲しいと意外な程に快く返事が返って来た。

そこからは意気投合して、サンプルを発注したり、談笑したりして、静かで心地良い時間がゆっくりと流れた。

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OLD TOWNのお店にある洋服は、全てサンプルだそう。
Marieさんから折角来たのだから店頭の現物を買っても良いとお許しが出たので、個人用にと夢中でピックしていると、
「その位にして!」と咎められた 笑
いい歳して恥ずかしい…

 

と、思っていたのは僕だけのようで、WillさんとMarieさんが急にバタバタし出したと思ったら、どうやら僕のバスの時間を気にしてくれていたようで、やはり楽しい時間はあっという間に過ぎてしまっていた。

帰り道、なんとWillさんはバス停まで送ってくれた。
姿が見えなくなるまで見送ってくれた姿を見て、僕の愛情が伝わったような気がして嬉しかった。

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正面だけでは無く、横顔や後ろ姿と結構Willさんの写真を撮っていた…
すっかり大ファンだから仕方が無い

 

感動に浸りながらのLondonへの帰り道………
見事電車の遅延に遭遇して現実に引き戻された。
冒頭に記した通りiPhoneの電波はほとんど繋がらない、夢のようなひと時の後に思い出しただけで身震いするようなトラブル。

結局Londonに到着したのは深夜。London Under Groundでホテルを取っているChelseaに向かっていると泥酔状態の激しいテンションの人達に囲まれた。
どうやら「AC/DC」のLIVEがあったらしく、皆さんかなりの興奮状態。
その後London Under Groundも急に途中で止まって2駅程暗い夜道を歩いて帰った。

本当に……本当に、本当に、思い出深い旅になった…
(何度も言うようだが、こんなトラブルまみれの出張は2度と勘弁して欲しい…)

 

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LOFTMAN COOP E-ma
2015年10月23日(金) – 10月25日(日)

LOFTMAN COOP 京都 2F
2015年10月31日(土) – 11月2日(月)

 

BUYER NAKANISHI, 出張

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